乳汁分泌不全
乳汁分泌不全について
母乳は赤ちゃんが免疫力をつけるために、重要なものの一つです。
通常、母乳は出産後2~3日中に自然と分泌されてきます。しかし、分泌が非常に少ない、または分泌されないという状態を乳汁分泌不全といいます。ちなみに、1回の哺乳時の充足量といわれる乳汁分泌量は約60ml以上です。
乳汁分泌不全は、真性乳汁分泌不全と仮性乳汁分泌不全にわけられます。割合は圧倒的に仮性乳汁分泌不全です。
真性乳汁分泌不全は、乳腺欠損(腫瘍の手術によるもの)、乳腺発育不全(乳腺の発育と関係するホルモンに対する感受性が低い)、乳腺以外の異常(下垂体機能障害、副腎皮質機能不全等)などがあります。
仮性乳汁分泌不全の理由として、
・乳汁の産生が少ないため、分泌量が減少する場合
・産生は十分だが、分泌や射乳がうまくいかない場合
・赤ちゃんの抱き方がわるい
・陥没乳頭、扁平乳頭で乳児が吸引できない
・乳児の吸い方に問題がある です。
具体的な原因では、
・全身的な要因(疲労、ストレス、精神的不安定、栄養不足、貧血、下垂体機能不全等)
・乳汁産生低下(乳腺発育不全、乳房形成術の既往等)
・乳児の吸引力不足
・乳汁排出不全(射乳反射不全、乳管の開通不全)
・乳汁排出不全に伴う残乳による乳汁産生機転の阻害(乳汁が残っているため、体がまだあると認識に新たに乳汁を作らない)
等です。
そもそも、乳汁の産生・分泌には、プロラクチン、コルチゾール、インスリン、甲状腺ホルモン、成長ホルモン等の多くのホルモンが複雑に関与しています。その中でも脳の下垂体から出されるプロラクチンの作用により乳汁が産生され、オキシトシンにより乳汁が分泌されます。
鍼灸での治療法
妊婦さんは妊娠中から以下の準備をして下さい。
①母乳栄養の大切さの理解
②乳頭を準備(乳頭を清潔にし、マッサージを行い、柔軟性をもたせる)
鍼灸の治療対象は、仮性乳汁分泌不全が対象になります。
鍼灸では、乳房の基底部(乳房の付着部)の緊張を緩和させ、循環を良くし、乳汁分泌を促していきます。使うツボは乳房周りで、圧痛があるような場所になります。
また、鍼治療と並行し乳房マッサージも効果的ですので、ご自宅でも行ってください。
前述に母乳の大切さを書きましたが、もし、乳汁がなんらかの理由でなくても悲観的にならないでください。確かに免疫に関しては重要ですが、母乳でなくてもミルクで赤ちゃんは正常に育ちます。最近は、ミルクと母乳半々とか、ミルクだけでも良いとされています。お母さんと赤ちゃんがストレスが少なくて、ともに成長していくことの方が重要になります。子育てにストレスはつきものですが、どうかお母さんもたまには休憩をして下さい。それがお母さんの為にもなるし、赤ちゃんの為にもなります。